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ケッケルト四重奏団のベートーヴェン [弦楽四重奏団]

koeckertBeethovencomplete.jpg

2009年11月15日の更新を最後に、本BLOGは事実の開店休業状態になりました。

理由はいくつかあるのですが、最大の理由は弦楽四重奏に対して興味がなくなったことが大きいでしょう。

いや、その言い方は正しくなくて、弦楽四重奏というジャンルに対して、少し背中を向けたい、正視したくない、という思いがありました。

弦楽四重奏が作り出す音楽は、人間の心の深いところに染みこんできて、内省的な思いを起こさせることがあります。

三十路を超えたあたりから、公私ともに忙しくなり、自分の内面を見つめるよりも、外側を向いて生きていかなければならないときに、どうしても弦楽四重奏は日々愛聴する候補から外れていったのです。

もちろん、それでも時々は聴いていました。

私が一番よく聴いていたのは、ブダペストのベートーヴェンで、何度聴いても感慨を覚えました。それに時々プラジャーク。

プラジャークは、SACD機器を新調したこともあって、ヘッドホンも以前よりグレード・アップしたためか、目の覚めるような音質を聴かせてくれるようになり、今ではスメタナよりも好印象です。

それから、この更新が途絶えている間に、本当に素晴らしい録音がCDとして蘇りました。

ケッケルト四重奏団のベートーヴェンの全集です。1953年から56年にかけて録音されたもので、モノラル録音。

それでもこの録音、とっても明快にとれており、楽器の質感、ふくよかで温かみのあるアンサンブルがよく捉えられていると思います。

今、130番を聴きながら、このエントリーを書いていますが、アマデウスやメロスの全集の登場で、ずっと日蔭にあった全集でありながら、訴えかけてくるものは前二者を遙かに凌ぐように思うのです。

それは単純な演奏云々だけではなくて(情緒満点、ドイツの古き良き伝統、あの黒くて深い森を思わせる弦の音色!)、弦楽四重奏は深化しているのか、という思いを常日頃抱いていたからです。

最近の新しいものでは、エンデリオン、タカーチ、アルテミス、エマーソンによる全集があるけれど、どこか食い足りない。

解釈としては素晴らしいし、アンサンブルだって正確無比、聴けばいつだって感心する。

それでも、弦楽四重奏にはそれ以上に、有機的な、人間の温もりのようなものを求めてしまう、下手でもいいから。

カペーやブッシュ、レナーがいまだに愛されるのは、そこに原点に立ち返るような「音」があるからではないでしょうか。

ブダペストだって、あのアメリカで飛び回った「こうもり」かもしれないが、彼らにはどこかグローバル化社会前の、人懐っこい声なき声のような温かさを感じるのである。あの独特の録音(ステレオ録音のほう)に、4人の奏者の心技一体、情緒を感じるのです、気のせいかもしれないが。

最近の団体にそれがないとは言わないけれど、表現の仕方が上手ではなくなっているように思えてならない。

人間に慣れていない人間が増えている昨今、こういう古き良き時代の香りに触れると、ふっとめまいがしたような懐かしさを感じますよ。


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コメント 5

羊飼い

お久しぶりです、ハンドルネームも忘れていました。

四重奏やモーツアルトなどは家族から飽きられ、ここのところ
現代音楽などを聞いていました。

久しぶりにベートーヴェンを聞いています。

ケッケルトの復刻が出ましたね、私はLPで聴いており、渋くて
コクのある演奏で大変気に入っています。
復刻の音はどうでしょうか。

DENONからバルヒェットの復刻もありました。
 
確かに、最近の演奏ではとタカーチ、アルテミス、ハーゲンなどを
聴いてみましたが、ものたりません。

生命体というか、そのような感じがツボのような気がしています。


by 羊飼い (2013-02-17 19:18) 

KITAKEN

羊飼い様

ご無沙汰しております。

少しずつまたこのブログも続けたいと思っております。The world of kitakenのほうが更新が頻繁になってしまっていますが・・・。

バルヒェットは全集を録音しているはず(そういえば、ブラフもステレオでスプラフォンに)ですが、CD化はまだ一部ですね。

ケッケルトのはLPでは聴いたことがないのですが、オリジナル・マスター・テープから、ルビジウム・クロックという超高精度の装置(人工衛星などに使用)して、従来の一万倍の解像度による音質向上を目指しているようです。確かに、見通しのよいサウンドで、アナログ・ライクな音質です。もっとも、LPの味わいはないかもしれませんが・・・

羊飼い様のお好きな全集は???
by KITAKEN (2013-02-17 21:57) 

羊飼い

好きな全集ですか。

全集はあまり所有しておらず、バリリQ、ヴェーグQ
(ステレオのみ所有)が気に入っています。 

カペーがステレオで全集だと、いいですね。

最近プレーヤーを変えて、バリリの良さを再確認、ヴェーグも
聴きなおす予定です。

ステレオでは、プラジャークが良いそうで、機会があれば
聴いてみたいです。 

全集は録音しないと思われるアルカントに興味があります。

ケッケルトも気に入っていますが、後期、中期とどうしても
手に入れたい曲だけそろえています。 ヨーロッパでは
評価されていたようで、ドイツ、イギリス盤はおろか、フィリップス
レーベルでも再販されています。

CDはお店で音質について質問しましたが判らないということで、
見送りました。 ハイドンも良いですよ。

CD化されていない名演奏は他にあり、それらをずっと
探されている方もおられるようです。

バルトークをクレームの来ない範囲で時々聴いています。
どこの演奏がお好きですか。
by 羊飼い (2013-02-18 19:33) 

KITAKEN

羊飼い様

バリリは、初期・中期・後期に関わらず、秀逸ですね。永遠に愛される古き良きウィーンのアンサンブルですね。

ヴェーグは旧盤のモノラルもいいですが、私もステレオに一票です。晦渋という評価もありますが、私には仙人のような演奏です。

プラジャークはSACDですし、もっと聴かれていいと思うんですが、ちょっと値段が高いですね。タカーチも改めて聴き直してみたら、「うまい」と思いました。愛聴には至っていませんが・・・。

最近好きなのは、ステレオではエマーソン。モノラルならケッケルト。SACDならプラジャーク、という感じです。

バルトークは、まだよくわかっていません。もう少し聴き進めたいと思っています。時々、古典四重奏団で5番を聴くくらいでしょうか。

お薦めがあれば、ご教示くださいませ。

by KITAKEN (2013-02-23 16:51) 

羊飼い

全集で所有しているのは、他にはズスケとアルバンベルク
くらいです。

タカーチは前期の録音を幸松さんが絶賛されており、入手
しました、こちらは当時は印象が良かったです。 

古典四重奏団の後期を図書館で借りて聴いたことがありますが、
なかなか良かったと、感じました。

エマーソン、ベートーヴェンは聴いたことがないのでとりあえず、
youtubeで聴いてみます。

バルトークは、こちらもどうと言えるほど聴いておらず、なんとも
言える状態ではないですね。
by 羊飼い (2013-02-23 18:24) 

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