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弦楽四重奏聴き比べ <ベートーヴェン:「大フーガ」> その⑦ [ベートーヴェン:弦楽四重奏曲]

 

18. レナー四重奏団 (SGA) 1930年録音
16'25''

 「レナー四重奏団を知っていますか」の記事に書いたので詳しくは書かないが、この演奏は録音も良好なこともあり、アンサンブルの妙、第1ヴァイオリンの甘美な歌いまわしと、格調の高い造型感覚が如実に味わえる。甘美さ、構築美・格調の高さの全てが融合した味わいは、何とも言えない。ヴォリュームを下げて夜更けに聴くと(あの晦渋なイメージの「大フーガ」が)懐かしい音楽のように感じられるほど。

19. バリリ四重奏団 (Westminster) 1952年録音
16'47''

 バリリ四重奏団はやはりええわ!と身を乗り出すも、音楽が緩やかになる頃からテンポがもってりとするようになり、そのまま冒頭の覇気は戻ることなく、ゆったりとした情緒綿々たる演奏になっていく。14番では磨かれ抜き、ウィーン的な甘美さを普遍的なレベルにまで高めようとする姿勢に頭が下がる思いをしたのだが、「大フーガ」はそこまでのレベルには達してないように思われた。とはいえ、これがウィーンのベートーヴェンなのだ。前衛的な「大フーガ」であろうと、楽譜を研究し尽し、ウィーン情緒満点で演奏してくれたことに感謝。

20. ブダペスト四重奏団 (United Archives) 1951年録音
16'26''

 録音の加減とはいえ、ステレオ録音との音の違いに驚かされる。まろやかかつ柔軟なハーモニー、憂愁さえ感じるしなやかさ。第2ヴァイオリンがゴデツキーであるが、彼一人の存在によってここまで演奏が異なるのだとすれば、相当な実力者ということになる(なお、ブダペスト四重奏団はSP時代にもベートーヴェンの弦楽四重奏曲を作品18-5を除く全てを録音している。印象はステレオ盤の演奏にうまみとアンサンブルの充実感を足したような演奏で、やはりこの50年代のモノラル録音は変わっていると言わざるを得ない)。しかし、この「大フーガ」は耳に快し、親しみやすしといえど、大きな感動を伴わない。彼らとしては突っ込んだ解釈が聴かれないのが残念でならない。ステレオ盤に至ってもその印象は変わらない。

21.ウィーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団 (PLATZ) 1992年録音
15'43''

 何じゃこりゃ!ウィーン・フィルのコンサート・マスターであるキュッヒルが第1ヴァイオリンだから期待したのだが、甚だ満足できない。熟しきれていない、酸っぱすぎるりんごをかじったような気持ちになる演奏で、音色の艶の良さ、新鮮さはあるのだが、アンサンブルも雑だし、うまみや情感、感情の表出、音のドラマ、精神の飛翔といった多くの四重奏団が聴かせてくれた「大フーガ」の魅力を全く聴かせてくれない。そして、ヒステリックなまでの奏し方が聴いていて辛くなる。「心技一体」という言葉から遠い演奏。同じウィーンの団体バリリが泣く。あと、ホールトーンがちょっと怪しい。エコーでは?


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