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オルフォード四重奏団のベートーヴェン全集を聴く(18-2 & 130) [弦楽四重奏団]

OrfordStringQuartetBeethovenComp1.jpg

 作品130にはこれぞという愛聴盤が存在しない。個人的には、ヴェーグQかブダペストQのステレオ録音が一番好きだが、どちらもカヴァティーナが美しくない。カヴァティーナが美しくなければ、名演足りえない、というのが難しいところだ。

 ところが、カヴァティーナに関しても、「これは!」という名演に出会ったことがないのだ。かろうじてバリリQとハンガリーQのモノラル旧盤が満足できるが、いま少しゆったりとしたテンポで音楽の美しさを満喫したい思いもある。バルトークQは小味に過ぎる。

 ゆったりとしたテンポといっても、何とかディスク大賞受賞のタカーチQのように粘りすぎると、音楽は低回し、素朴さや情緒、神韻飄々たる神秘感が失われてしまう。ただのムード音楽になり下がる可能性が常にあるわけだ(アルバン・ベルクQ)。

 オルフォード四重奏団の演奏も甚だ満足できない演奏だ。一楽章は現代風のスタイルで、序奏部をゆったりと演奏し、主部に入ると元気一杯。機能性を重視し、きびきびと進んでいく。個人的にはここはこのような音楽ではなく、寄せてはかえす波のように、悠久を感じさせる音楽でなければならぬ。たとえば、ステレオ録音盤のブダペストQを聴いてみれば、主部がどんどん盛り上がっていくにつれて、テンポが自然に落ちていくのを再発見することだろう。この絶妙の呼吸感こそ、音楽の真の姿をあぶり出すのである。

 二楽章、三楽章、四楽章については短い間奏曲のような風情があり、オルフォード四重奏団も妙な神経を使うことなく、音楽の美しさを清らかな弦の音色によって表出している。プラジャークQは神経を使いすぎて曲の自然な流れを失いがち、アルバン・ベルクQはただ流れていくだけ。オルフォード四重奏団はさすがにそのようなことはない。ただ、ヴェーグQのよう幻想性や、聴いていて滅法悲しくなるような枯淡さには程遠い演奏だと言える。ブダペストQにしても、何にもしていないように見えてそこかしこに寂寥が漂っているではないか。

 カヴァティーナはやや遅め。美しいことは美しいが、さらに豊かさと繊細さを兼ね備えた幻想性の表出が必要であり、現実的にすぎる。

 終楽章は「大フーガ」ではなく、ベートーヴェンが新しく書いた新版を用いている。「大フーガ」を真の終楽章であると断ずる音楽学者や愛好家の方々も多いが、作品131との姉妹作という観点からすれば、この新フィナーレもそれなりの見事さを持ち、作品130に統一感をもたらしてはいる。それが作られた統一感であり、「大フーガ」こそ、曲全体に均衡と不均衡をもたらすミューズなのだとも言えるが・・・。聴いてよければ、全て良し。オルフォード四重奏団のは可もなく、不可もない無難な仕上がり。 

 併録の18-2は130よりは数等素晴らしいが、18-1のような完成度には欠ける。強音はいささか耳に痛く、初期四重奏曲集が持っているやわらかさと瑞々しさを欠きがちなのが残念だ。たくましすぎるのが良くないというわけではないが。


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ビギナー

暑い日が続いていますが、お元気でしょうか?
貴兄のプロフィールを拝見し、共通の嗜好が多いので、本コメを書こうかどうか・・・と、ずーっと気になっていました。
私も、『蕎麦』&『日本酒』には大いに関心がある者で、時折ネット等で情報収集に努めております。
例えば、山形県大石田町の『きよそば』では、十四代を供しており、それを楽しんだ直後に美味い蕎麦を味わうことができるようです。
大江町の『テルメ柏陵』で入浴してから、『きよそば』で十四代&蕎麦の昼食なんていうコースはどうか・・・、しかし、その後、車の運転は???   やっぱり関東からは遠すぎるかな   な~んて考えたりしています。
貴兄は、『十四代』はお好きではないでしょうか?
by ビギナー (2008-07-29 10:08) 

KITAKEN

ビギナー様

こんにちは、コメントをありがとうございます!
共通の嗜好が多いとのこと、ご同慶の至りです。

まず、『蕎麦』は飲むものではなく、食べるものという思いを抱くようになりました。これも、とある山麓に住む名人の言葉の受け売りなのですが、50回噛んでこそ味わいの増すような蕎麦を食べたいものです。

私は蕎麦と鴨の相性は、ワルターとウィーン・フィル並の絶妙さがあると思っております。鴨の味で、その蕎麦屋の仕事もわかりますし、まずは鴨つけを食べるのが私の楽しみ方です。

最近は『蕎麦』を自分で打ってみようかなどと考えています。

蕎麦屋で日本酒を飲むことはそれほどないのですが、これは着物が似合う年齢になったらやってみたい遊びです(笑)。でも、時々やっています。

月並みですが、好きなのは「八海山」。冷でも熱燗でもいけるお酒ですね。あとはやはり、「久保田」。癖がなく、これは冷で足がふらつくまで飲みたいところ。ご指摘の「十四代」は関東ではなかなかお高いですが、いい味ですね。

蕎麦には甘口、焼き鳥には辛口。いいですね~~。

鴨蕎麦を食べながら、日本酒をちびちび。バックには弦楽四重奏のしみじみとした音楽が流れている・・・。うん、贅沢。
by KITAKEN (2008-07-31 15:43) 

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