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メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第4番 ホ短調 作品44の2 [メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲]

 以前、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲は第1番を採り上げた。この第1番はメンデルスゾーンが身に付けた様々な音楽の語法と独自の作風によって練り上げられた佳曲であった。

 メンデルスゾーンの音楽はどんなに音楽が激しく、切なくなろうとも悲愁が漂うだけであり、人間の心の内面の暗い部分やドロドロとした情念を聴かせることはあまりない。そういうとメンデルスゾーンの音楽に深みがないように思われるかもしれないが、むしろメンデルスゾーンの場合はそれが大きな長所であり、彼の音楽はどんなときも太陽が照らし出すような輝きを放っているのである。

 深刻なブラームスと比べて何という違いだろう。メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲をプレイヤーにセットするときは、「一体どんな音楽が始まるのだろう」というわくわく感がある。彼の音楽が放射する太陽の輝きを全身に浴びるような気持ちになる。

 ブラームスの弦楽四重奏曲も次に採り上げるつもりだが、交響曲よりも管弦楽作品よりも、そして他の室内楽曲よりも、込み入った複雑な曲想を音楽である。晦渋かつ苦味ほとばしる観念の塊のような音楽。これがブラームスの魂の本質のように思えてならない。

 閑話休題。

 メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲の中でも屈指の名曲として、今回採り上げた第4番が挙げられるだろう。まず一楽章冒頭が素晴らしい。美しい旋律の背後で動き回る短調の伴奏部。激しい風にしなる夜の森の木々のようだ。全体を通して悲愁に満ちながらさわやかな香りを残す名品であるが、どこかベートーヴェンの作品132を思わせるようなロマンがある。二楽章もスケルツォもアイディアが満載であり、三楽章もアンダンテ指定とは言え、けして緩徐楽章には聴こえない流れの良さがある。終楽章も美しい旋律が満載の動的なもので、聴いていて感心してしまう。

 なるほど、人を熱狂的に感動させる、身も心もどうにかなるような感動で人の心を揺さぶる、というタイプの作曲家ではないのかもしれない。しかし、音楽の好きな人を唸らせ、楽しませ、そして聴いた後に何とも言えない清々しさを与えてくれる作曲家として、彼が残してくれた弦楽四重奏曲は特別な輝きを放っている。

 ヘンシェル四重奏団の演奏は、健康的で美しい美音と、気心の知れた家庭的なアンサンブルで好感が持てる。タートライ、イザイ、フォーグラーなどの四重奏団でも聴いてみたい。

 


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