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メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第1番 変ホ長調 作品12 [メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲]

 1996年に開催された第二回大阪国際室内楽コンクールで第1位に輝いたのは、ヘンシェル四重奏団だった。彼らの演奏の特徴は、爽やかで伸び伸びとしたフレージング、アンサンブルの均一な同質性(つまり、統一感)、くつろいだ家族的安らぎ、瑞々しい音色にある。

 メンデルスゾーンの弦楽四重奏は近年ますます注目され、人気も高まり、全集盤も多くなった。この天才肌の作曲家の弦楽四重奏曲をひとつ試してみたい、という方には絶好のアルバムである。値段も手ごろ、録音も秀逸、演奏もまた上記の特徴が発揮された素晴らしいものである。

 お聴き頂ければすぐにお分かりになると思うが、彼らの演奏は非常に練り上げられ、磨きぬかれた素晴らしいものである。技術を前面に出さず、楽器の木質の音を魅力的に響かせ、手作りの音楽を聴かせる、というのは真の実力がなければできないことである。

 私個人はメンデルスゾーンの良い聴き手とは言えないが、聴いてみてメンデルスゾーンも悪くないと思った。

 一楽章の冒頭から懐かしい香りがたちこめ、ああ良い曲だと思わせる。音楽は全編憂愁は帯びることはあっても、深刻にも悲劇的にもならない。

 メンデルスゾーンが如何に優れた作曲家であったかということはそのカラフルと形容したくなる曲想の変化である。次から次へと新しい発想、斬新な音楽語法が登場し、日頃、ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェン・シューベルト・ブラームスばかり聴いている者には新鮮で仕方がない。ロマン派万歳である。そうした印象を強く持つのは二楽章で、これはやはりメンデルスゾーンにしか書けない曲だと思わせる。独特の明朗さと愉しさがあり、一際この弦楽四重奏曲を魅力的なものにしている。さらに印象的なのは終楽章である。「イタリア」などで聴かせるメンデルスゾーンの激しさが爆発し、これまた美しいし、愉しい。曲の終りは最弱音で終わるというペシミスティックなもので、ここはやはり「時代」だなと思わせる。

 夜、家族の寝静まった空間で音量を絞り気味に聴く。まことに玄妙であり、ヘンシェル・カルテットのきらきらとした才能とともに楽しませてくれる演奏だ。ハイドンやモーツァルトと比べてどうか?ベートーヴェンと比べてどうなのか?あるいはブラームスは?そんな比較をしてみるのも一興だ。


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